ALSなどの障害や難病、身体障害などを持っていて自分の体を自由に動かすことができない皆さん、障害を持っていて悩んでいる親友・家族がいる皆さん、こんにちは。
あなたは身体が自由に動かせないことが理由で、働くことを諦めてはいませんか?働く範囲を制限してはいませんか?
そんなあなたに本日は、体が自由に動かせなくても自分の分身を使って「カフェで働く」といった接客業の仕事までできてしまう魔法をご紹介していこうと思います。
これを読んで、あなたも「魔法」の世界を知ってみてください!!
目次
分身ロボット、オリヒメ(Orihime)とは?

Orihime(オリヒメ)は、あなたの「分身」になるロボットです。
そのすごいところは「ロボット」と「人」ではなく、「人」と「人」をつなぐコミュニケーションツールとして開発された遠隔操作ロボットとして知られているところです。
巷で注目されているAIとかの人工知能や、シンギュラリティーという世界に全く触れていないため開発当初は、
「別に分身がいなくてもスカイプで会話できるじゃん?」
「分身がいることってそんなに重要なの?」
などと言われてなかなか相手にされなかった経験もあります。
だけど、このロボットが、とにかくすごいんです。
「分身」がいるかいないかで、今見ている世界は180度変わるんです。
自分の「分身」がいるということがどれだけ素晴らしいかを、これからの章で皆さんに知ってもらえたらいいなって思います。
分身ロボットオリヒメ(OriHime)が凄い3つの理由

それでは、オリヒメの本質に迫りながら、自分の分身がいることの素晴らしさを見ていきましょう。
OriHime(オリヒメ)の凄さ①:本人に見えてくるデザイン性の高さ
分身どころか本人がまるでいるように見えてくる・・。
スカイプなどのテレビ電話では、この”存在感”は出すことができないと思います。
そして、この存在感が重要なんです。

例えば、職場でそこで「一緒に働いている」という認識を持っていると、こんな変化が起こります。
働いている本人は一緒にその場で働いているという「自信」と「自己肯定感」を得られ、一緒に働いている人たちも彼・彼女の存在を忘れることがなくなります。
それは例えば、電話会議を開いたときに役立ちます。

「電話で繋がれている遠隔の相手を忘れて話を進めていて・・・」
「最後に取って付けたかのように意見を聞く」
といったことがなくなります。
『OriHime(オリヒメ)とデザイン』

ではなぜ、そこまでオリヒメというロボットではなく、操作している人がその場にいるという感覚を出すことができるのでしょうか。
それには、オリヒメのデザインが関係しています。
例えば、オリヒメの目。
よく見てみると、黒目がありません。

これにも理由があって、黒目を入れるとオリヒメ自体がキャラクター性を持ち始めて、操作している人のキャラと対立してしまうからだそうです。
あくまで、オリヒメが操作している人の分身でいるためには、オリヒメ自体は「無の存在」でいなければならないのです。

このようにデザインの設計のところでの工夫が随所に散りばめられているため、オリヒメは初めて分身として機能することができるのです。
OriHime(オリヒメ)の凄さ②:外出が困難な人が社会と接点を持ち、仕事ができる。知的労働だけでなく、肉体労働の仕事もできる。
これは、今企業と連携して開発中のオリヒメDのお話です。
オリヒメDを使えば、外出困難でも、肉体労働までできてしまうというすごい世界です。
こちらについては、2018年に初めて実証実験を始めてから、毎年1回10日間程度開催されているカフェの模様をご紹介しながら、どんな風に仕事をしているかご紹介していこうと思います。

カフェで接客しているこちらのロボット。
実は障害があって外出困難な人たちが遠隔操作でパイロット(操作する人)となって働いているんです。
2018年11月に初めて、試験的にオープンした分身ロボットカフェ「DAWN(夜明け)」。
10日間という期間限定ではありますが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの障がいを持っている人など15名ほどの人を雇用して開かれました。

(分身ロボットカフェDAWNちらし↑)
雇用された人たちには給与として時給1000円が支給され、東京、愛知、埼玉、岐阜、三重、島根など各地から遠隔で働いていました。
分身ロボットカフェDAWN(ドーン)は、2018年に実験的に行ったのを皮切りに、2019年、2020年と毎年、1週間程度の期間で開かれています。

企業と連携しながら進めており、ANAや日本財団、NTT、花王といった様々な大企業が協賛や共同しながらカフェを毎年開催しています。
期間限定ではなくて常設でこのようなカフェが今後できていけばいいなと思いました!
OriHime(オリヒメ)の凄さ③:全身硬直状態の人でも、絵を描いたりおしゃべりをしたりできる。
OriHime eye(オリヒメアイ)を使うと、全身が動かない状態でも目や指先の動きをつかってコミュニケーションをすることができます。
OriHime eye(オリヒメアイ)は、ALS患者や難病の人たちと協力して開発しました。

”視線入力装置”という装置が搭載されていて、この装置によって文字の入力と読み上げを可能にしています。
このOriHime eye(オリヒメアイ)を使って「できる」を増やしている例が、ALS患者の榊浩行(さかきひろゆき)さんです。
榊さんの生活ぶりを見てみると。。。
榊さんは、ALSによって体は動かせませんが、趣味の絵を描いたり、Facebookで友達と会話もしています。
↓榊さんが眼球の動きを使って描いた絵はこちら↓

参照元:第一回次世代ロボットの夢(livedoor NEWS)より
さらに、OriHimeを使って現在も職場に出社し、給料をもらって働いています。
他にもできることとして、好きな音楽をかけたり、テレビのチャンネルを変えたり、OriHimeと併用して握手したりもできます。
これらのことが、介助者なしでできるというところが嬉しいところです。
この事例を知ってもらって、「まだ自分にもできることがある!」と少しでも希望につなげてほしいと、強く願っています。
導入費用について

今回ご紹介した中で現在、分身ロボット・オリヒメの一般利用可能なシリーズは、OriHime(オリヒメ)と、OriHime eye(オリヒメアイ)となっています。
OriHime(オリヒメ)の価格

OriHime(オリヒメ)は現在、レンタルのみの利用が可能です。
1ヶ月、4万円から利用可能です。
イベントパックや法人レンタルパックなど色々なレンタルの形式があるので、利用をご検討の方はこちらの公式サイトをご覧になるかお問い合わせをしてみると良いでしょう。
OriHime eye(オリヒメアイ)の価格

OriHime eye(オリヒメアイ)は、非課税対象商品となっており、現在45万円で販売しています。
また、国の補助金制度である補装具費支給制度を利用できれば、1割負担で購入することができます。
(補助具費支給制度の利用実績あり。)
OriHime eyeの購入に関しての詳細は、こちらの公式ページからご確認ください。
オリィ研究所

それでは、分身ロボットオリヒメを作っているのは、どんなところなのでしょうか。
分身ロボットオリヒメは、株式会社オリィ研究所で開発しています。
2012年9月に設立され、ミッションとして、
身体的問題や距離を、コミュニケーションテクノロジーの研究開発により克服して、会いたい人に会え、社会に参加できる未来の実現
を掲げています。
普通「テクノロジー」というと「人間を排除するもの」とか「人間に取って代わるもの」といったような少し、近寄りがたいイメージがあるのですが、
オリィ研究所では、「人がもっと人らしくあれるための手段(ツール)としてテクノロジーを活用していく」ということを設立当初からずっと持っていて、ぶれていないところがすごいと思いました。
あくまで、「人」と「人」であって、「人」と「ロボット」ではないのだなと。
社会そのものの可能性をテクノロジーによって拡張していく、オリィ研究所のプロダクトに可能性と先見性を感じました!
オリィ研究所の吉藤オリィとは?

オリヒメ研究所の所長さんは、吉藤オリィさんと言います。
米フォーブス誌 “30 under 30 2016 AISA” に選出されるなど、国内外で注目を集めています。
<吉藤さんが、OriHimeを作ろうと思った動機>
なぜ、彼は分身ロボットオリヒメを作りたいと思ったのでしょうか。
その動機は、ずっと以前まで遡ります。
彼は体調を崩して学校にしばらく行けなかったことが引き金となり、その後3年間ほど不登校になってしまったことがあります。

その時に彼は、「絶望的な孤独感」を味わったと言います。
そして、「このような経験は二度としたくないなぁ」という思いが心の中にずっとありました。
この不登校と孤独からは、彼の母親の勧めで行ったロボット教室と、そこで出会った恩師のお陰で克服することができたそうです。
その後、恩師の先生のいた王寺工業高校に弟子入りすべく進学したのですが、今まで不登校で人に迷惑をかけていたことに対する負い目から、これからは「何か人の役に立つものを作りたい」という考えがあったそうです。
そんな時に参加したのが特別支援学校のボランティアだったそうです。

知的なハンディキャップがあったり体が不自由な生徒たちが「車椅子」に乗っていたそうですが、その車椅子がとても不便だったのでこれを解決したいと思ったのが、車椅子作りのモチベーションとなったそうです。
車椅子の開発の中で目指した理想の姿は、「一人乗りのオープンカー」。

これを聞いて「え、何考えてるんだ?」って思った人は少なくないはずです。
私もそうでした。。
ですが、他の福祉機器のことを考えてみてください。
例えば「メガネ」。

これは、「目が見えない」という障害を取り除くために開発された「福祉機器」です。
ですが、街でメガネをかけている人のことを私たちは「障害者」とは思いません。
それどころか、有名ブランドなどがファッションの一部として雑誌で高々と宣伝していたり、「このメガネかけてる人センスいいね」などと、もともと目が見えないという「障害」を取り除くために発明された福祉機器を「楽しむ」ことを当たり前のようにしているのです。
同じ福祉機器なのに、一方では「楽しみ」を感じられる商品であるのに対して、もう一方では「申し訳なさ」を感じながら利用しなければいけない。

これは「車椅子」がまだ福祉機器として完成度が高いところまでいっていない結果生じていることなのでは、と吉藤さんは考えました。
そこで、さっきの「一人乗りのオープンカー」という着地点が出てくるのだ、と言われると、まだ完全に彼の頭についていっているかはさておき、多少は「なるほどぉ。」と思っていただけるのではないかと思います。

車椅子の話はさておき。。
そののち、彼は17歳の時に、兼ねてからあった「孤独の解消」を自分の生まれてきた意味と定義しました。
ほうほう。
「あと何年生きるか分からないけれど、30歳で死ぬと仮定して、あと13年で孤独を解消する方法を世の中に残してから死のう」と考えたわけです。
<孤独の解消に用いた手段:人工知能(AI)>

「孤独の解消」という問題を解決するのにまず、人工知能(AI)を使おうと考えました。
「人工知能で話し相手(友達)を作る」試みの始まりです。
その時の彼には、多くの人工知能を開発しようとしている人たちの考えにもある「生身の人間の友達ってコスパ悪いよなぁ」って考えがありました。
しかし、続けていくうちに、「これが孤独の解消になるのか?」と疑問を持ち始めます。

その後、自分がそうであったように、「孤独の解消」には「人」と「人」の関わりは不可欠だという結論に至ります。(コスパは悪いかもしれないけど解決できなければ意味がない!)
人工知能は技術面からも、人間らしく見えるためには課題がまだたくさんあることがわかり、「人工知能で孤独を根本的に解消することはできない」という考えに至ったそうです。
<人工知能での解決を断念して・・次の手段>

人工知能の研究を諦めたため、高専を1年で退学し、早稲田大学の理工学部に入りなおします。
入学当初は人工知能がダメならどのように孤独を解消するか、「具体的な作りたいもの」のアイディアは無かったそうです。
ただ、「孤独の解消には人との関わりが不可欠だ」という確信だけが軸となっていたそうです。

ですが、開発したい当の本人が「人との関わり(=コミュニケーション)」のことをわかっていない。
そこで、大学に入学後は様々なサークルに入り、コミュ力のある人たちとコミュ力の無い自分との「異文化交流」を始めたそうです。
演劇サークルや映画サークル、能面などのサークルに入り台本などを熱心に読んでいくうちに、コミュニケーションとはリアクションだという結論に至ります。

そして、このリアクションが薄かったもしくは無かったために、幼いころ、不登校になってしまったのでは無いかと考えます。
ならば、分身に代わりに学校に行っておいて貰えば、忘れられることもなくなり、居場所ができるのでは無いか。
まずは心を運んでおいて、そのあと体を運ぼう。と。
そういう考えから分身ロボットという発想が生まれました。
オリヒメの活用事例

OriHime(オリヒメ)は、台数にして300台、企業では70社程度で採用されています。(2019年時点)
それでは最後に、オリヒメを活用して「障害」を取り払っている事例をかいつまんでご紹介していきたいと思います。
NTT東日本
育児や介護などの理由により外出困難な社員に対して、OriHimeを使ったテレワークを推進しています。
詳しくは、こちらの記事からお読みいただけます。
日本ALS協会
協会の総会の時に、外出困難な会員のためにOriHimeを用いた参加ができるようにしています。
神奈川県、高野さん
研究者として早稲田大学大学院を卒業後、NECにて研究職につく。米スタンフォード大学で客室研究員となるなど第一線で活躍していたが、48歳の時にALS(筋萎縮性側索硬化症)発症。ALS発症後も、OriHimeを使って、神奈川県共生社会アドバイザーに就任して仕事を行ったりしています。
詳しくはこちらからもご覧いただけます。
補足:社会に役立つということ。
OriHime(オリヒメ)には、みんなの「心の車椅子」となってほしいという願いが込められています。

分身ロボットオリヒメがどうしてすごいのかというのは、ここまで読んでいただいて多少なりともわかっていただけたのではないかと思います。
それでは、それを社会で役立てるためには、どうしたら良いのでしょうか。
これについて、オリィ研究所所長の吉藤オリィさんは、「研究」「ビジネス」「啓蒙(周知)」の3点セットで世の中を変えることができると考えています。
研究:技術を向上させる。
啓蒙活動:みんなに知ってもらう。
ビジネス:実際に使ってもらう。
この三つをぐるぐる回して進化させていくことで、ようやく時代は変わっていくと言います。
終わりに

いかがでしたでしょうか。
本日は、一目見ただけではその凄さがほんのちょっとしかわからない、分身OriHime(オリヒメ)の凄さをこれでもかというほど詰め込んでみたつもりです。
この記事を読んで、「障害」をハンディキャップとしてではなく「個性」として活かせるような個人やコミュニティーになるきっかけや気づきを汲み取ってもらえたら嬉しく思います。
それでは、本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回、お会いしましょう〜。
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