セクシュアル・マイノリティーの方、障害を持って生まれてきた方、犯罪を犯した方とその家族の方へ。
あなたは、その他大多数のマジョリティーの人から、『劣っている』と見られてはいませんか?
あなた自身は、その自分を認めたい・ありのままの自分でいたい、と思っているにも関わらず。
映画「いろとりどりの親子」では、そんな人との違いを「個性」として認めようと葛藤する本人とその家族について描かれています。
この記事を読んであなたも、障害があっても無くても関係なく、人は幸せに生きれるんだということを感じていただけたら幸いです。
この映画の見どころ
様々な「違い」を乗り越えていくための奮闘を描いた本作。
断とうと思っても断てない親と子の「愛」について繊細に、力強く描かれています。
まだまだ、理解されないことの多いマイノリティーの人々。
まだまだ、弱い立場にいるマイノリティーの人々。
それが少しずつ少しずつ、受け入れられ始めているということ、幸せに暮らし始めている家族がいるということを、この映画のレビューを通して学んでいただけたら幸いです。
6人の主人公とその家族の物語
1. 本映画原作の著者&ゲイのアンドリュー・ソロモンさんと父、ハワードさん

本当の自分を捨てようとしたことが、自分への暴力だった
と本編冒頭で語るゲイのアンドリューさん。
これまでに、女性を好きになろうと様々な治療を経験し、その全てが自分への暴力であったと語っています。
今でこそアメリカでは、
「同性愛が、治療すべき病気から祝福されるべき個性に変わった」
と語るアンドリューさんですが、自身が同性愛者であることに苦しんでいた当時は、鬱になるまで苦しんだのだそうです。
母親には、自分がゲイであるということを受け入れてもらう前に亡くなられてしまった。
悲しい思いを持っていたアンドリューさんですが、本映画の原作である「Far from the tree」を執筆するにあたり300以上の「違い」を持つ親子に取材していく過程で、
「親はたとえ、自分とは遠くかけ離れた個性を持っていたとしても、我が子を愛さずにはいられない」
ということを学んだのだそうです。
そして、
「愛と受容を混同していた。」
と本人は反省します。
そんなアンドリューさんは現在、同性パートナーと結婚し、パートナーと共に息子を育てる幸せな日々を送っています。
アンドリューさんの父親からも息子がゲイであることの理解を得られ、結婚式では祝福の辞を述べてもらっていました。
2. 低身長症の夫婦、リア(妻)とジョセフ(夫)

低身長同士の夫婦リアとジョセフは、映画で映し出されている全ての場面において、普通の人となんら変わらない日常の幸せを存分に味わっているように感じました。
まるで、低身長であることになんの障害もないかのようにです。
リアの夫であるジョセフは、
(健常者は)みんな、身体に障害があると心まで不自由だと思っている。本当は心はこんなに自由なのに
と語っています。


そんなジョセフは、サンディエゴ州立大学で哲学の助教授を勤め、生命倫理、障がい哲学、フェミニスト哲学についての講義や執筆をしています。
そして、妻のリアは、低身長症の年次大会Little People of Americaの主催団体で役員を勤めています。
リアは、年次大会のミーティングで、低身長が医学で治せる可能性を医学の専門家に指摘された際、こう語ります。
私たちのような症状を『治してやろう』だなんて、個人的には大反対。治すところなんてないわ
『低身長である』ということは、彼らのアイデンティティーであり、誇りですらあるのだと感じました。
彼女は、
「今の自分たちが、ありのまま認められるべきだ」
と主張します。
リアとジョセフの間に待望の赤ちゃんができた時の幸せそうな様子。
子どもを持った時の親の幸せな温かさそのままでした。
この夫婦の間に、「障害」という壁は存在しません。
彼らは確実に、それを個性として自分のアイデンティティーを形成するものの一つと位置付けています。
普段、健常者・障害を持った人にかかわらず忘れがちな、「日常のそこにある幸せ」を二人で感じあい、大切に育てているからこそ、彼らがあんなにも幸せそうに見えるのだと思いました。

そして、ジョセフがチェスで健常者を打ち負かしている姿は、低身長症である彼が持つ「誇り」さえ感じさせられました。

今ハンデキャップを持っていて悩んでいる方がいたら、
ぜひ彼らから幸せであるために大切なことを学び、刺激を受けてほしいです。
3. ダウン症の子どもを持つ親子(子:ジェイソン、母親:エミリー)

両親は、生まれてきた子がダウン症であると医師から告げられ、
「施設に入れるなら今のうちだ。」
と言われます。
母親のエミリーは、
「愛情が生まれない今のうちと言われても、もうこの子は何ヶ月も私のお腹の中に入っていて、その間に愛情は十分生まれているわ。」
と語ります。
ジェイソンの両親は、息子がダウン症という障害を持っていることを理由にせずに、彼に学ぶ機会を与え続けました。
おかげで、生まれた時に、
「読み書きは難しいだろう」
と医師から言われたのにも関わらず、英語だけでなく、様々な言語を話せるようになりました。
人々の注目を集め、アメリカの人気テレビ番組「セサミストリート」に幼いころに出演しています。
そこで、ダウン症の人の可能性を身をもって伝える役割を果たしました。
そんなジェイソンは今や41歳。

同じダウン症のルームメイトと3人で家をシェアして暮らしています。
かつでのような世間からの注目はなくなったジェイソンですが、今の暮らしをとても幸せに感じています。
ただ、母親のエミリーは、かつて人々から注目を浴び、人気者になっていた頃を少し懐かしんでおり、
「本当に、今の暮らしでいいのか?」
と疑問を持っているように見受けられます。

ジェイソンは、
現実と空想の区別がつかない、それが問題だ。
と話します。
母親のエミリーもそれを気にしているようで、彼に、
「目を覚まして」
とでも言うかのように説明し続けます。
なぜエミリーが心配しているかというと、Let it goにはまり、ジェイソン本人がエルサになりきっているからです。

Let it goを聞いた時に、教えてもらった。
とジェイソンは語ります。
何を教えてもらったのかは不明ですが、
『ありのままの自分でいたい』
という想いに素直になれるから好きなのかと思います。

ジェイソンはこれまで、”周りと比べて” 劣っていないということを周囲に見せるための努力を重ねていました。
ですが今は、
『優劣じゃない本当の自分に目を向けてほしい』
と思っているように感じます。
ありのままの自分に自信を持ち、そこに愛を見つけられたのは、彼いわく、
ダウン症で生まれてきたからこそ出会えた今の(同じダウン症の)友だちと、13年間3人で仲睦まじく暮らしてきた時間。
があったおかげだと思います。
「今を受け入れる」
とジェイソン本人は語ります。
『自分自身であれること』
『その自分自身を愛してくれる仲間がいること』
に励まされて幸せに暮らせているのかなと思いました。
周りと比べるのではなく、自分の人生を生きる。
愛する人たちとともに幸せに暮らしてほしいと思います。
4. 自閉症の子どもを持つ親子(子:ジャック、両親:オルナット夫婦・父:ボブ、母:エミリー)

2歳になってからタイピングを覚えるまで、言葉を発することがなかったジャック。
ある女性教師との出会いによって、自分の気持ちを伝えられるようになります。
今まで一度も、自分の思いを人に伝えることができなかったジャックが、初めて両親に伝えたことは・・・
(何時間もかけて、なんどもアルファベットを指で指し)
僕は、頑張っている。
自分の思いを伝えることができたときの、ジャックの生き生きとした表情。
やっと息子の心を感じることができた。
と感じたときの母親の涙と嬉しさ、計り知れませんでした。
父親のボブは、ジャックに向かって言います。
『普通じゃなくていい。お前は、、、(お前のままで素晴らしい)』

自閉症ではあっても、学校の成績はオールA。
普通の子たちと一緒の学校に通っています。
そんなジャックが、
「自分自身を例えるとなに?」
という質問に対して答えた回答は、
「檻(おり)の中のトラ」
でした。

心の平和や平穏にたどり着くのはもう少し先なのかもしれませんが、タイピングを通して自分の気持ちを伝えることができるようになって、一歩一歩前進していると思います。
色々な人と出会い、幸せを見つけてほしいなって思いました。
5. 犯罪を犯した少年を持つ家族(子:トレヴァー、家族:リース一家・母:リサ、父:デレク)

親子の愛は、それでも消えない。
ある日、大切に育ててきた当時16才の息子トレヴァーが、8才の少年を殺した容疑で逮捕されます。
現在、終身刑に服している息子のトレヴァー。
夫婦とも、トレヴァーが8才の少年を殺した罪を聞いたとき、
死ぬか逃げるかしか考えらなかった。
と言います。
事件後、リース夫妻は大学生の息子と高校生の妹とともに、テキサスに移り住みます。
そして、大学生の息子タイラーと高校3年生の娘レベッカは、将来子どもを持たないと考えています。
どんなに愛情豊かに育てても、過ちを犯すことはある。
ということを、現実として家族のなかに観てきているからだそうです。
弟妹たちの将来への不安は、今も大きく心の中に根付いています。

でも、家族の絆はより深く強く結びあっている。
と父デレクは言います。
父親のデレク自身、
「息子の犯した罪を一生負っていくことになる。」
と話しています。
刑務所のトレヴァーからの電話で、母親のリサと通話する様子。
それでも、自分の子を愛さずにはいられない。
(Every mother in the world cannot stop loving a child.)
そう、母親のリサは語ります。

他のマイノリティーと比べて保護されることはなく、時に追放されることも経験し、社会からもっとも孤立した存在として目を伏せられがちな犯罪者とその家族。
この映画の上映試写会がニューヨークで行われたときに、壇上で声を詰まらせながらやっとのことで訴えた母親のリサさんのことば。
私たちに目を背けないでください。
『犯罪者の家族』ということで受け入れられないかもしれないという不安があるなか、壇上に立ち、意を決して発した彼女のメッセージは、今後も深く人々の心に残り続けると思います。
6. 珍しい種類の低身長症を持つロイーニ(23才)とその母親

エルサルバドルとアメリカンサモアの血を引くアメリカ人、ロイーニ・ヴァヴァオ。
「マジュースキー骨異形成性原発性低身長症2型」という非常に珍しい型の低身長症を持つ23才の女性です。
家族で低身長症を持っているのはロイーニだけ。
なかなか自分の心情を家族に理解してもらえないロイーニは、少し不愉快そうに見えます。
彼女は、家族から過保護に扱われることや、周りに小さい子扱いされることにストレスを感じていました。
初めての低身長症の年次大会である “Little People of America” への参加は、そんな彼女に希望の光を与えました。

ようやく自分と同じ境遇の人たちと知り合い、仲間に出会う幸せを味わうことができたのです。
「自分の人生を生き生きと生きていこう。」
というマインドに変わっていきます。
もっと外にへも出たいし、旅行もしたい。デートもしたことがないの。
と語ってくれる姿は、どこにでもいる普通の23才の女の子の気持ちです。
低身長の仲間との出会いに励まされながら、どんどん自由を掴んでいってほしいと思いました。
まとめ

この映画の原題、”Far from the tree”(木から遠い) は、英語のことわざである “The apple doesn’t fall far from the tree.”(りんごは木から遠くへは落ちない。) からきています。
これは、リンゴの木=親、リンゴ=子どもという風に例えた比喩で、日本語のことわざで言うと、『子どもは親に似る』という意味です。
この原題は、その逆説で、子どもと親が大きな『違い』を持っているということを表しています。
本記事でご紹介した映画の登場人物6人はそれぞれ、親とは大きな『違い』を持った子どもたちです。
この記事を読んだ人が、その『違い』をアイデンティティーとして尊重できるようになっていけたら、嬉しいです。
自分らしく生きることが、幸せへの唯一の道。
様々な個性を持った人たちが協力して、幸せに暮らしていけることを心から願っています。
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